自然樹形
このところ、樹木に関する苦情の電話を頂きます。
大抵は、カラスの巣とチャドクガ。
国道246号線にほど近い深沢に3000㎡もある、わき水の池がある
お庭があります。この広い庭は、かつて大きな会社を営んでいた
方の邸宅で、その後別の方の手に渡りましたが、庭はそのまま残
されています。
池にはカワセミやコサギが訪れ、秋は川面に映るイロハモミジや
ハゼノキの紅葉。圧巻なのが、何本も天空にむかって伸び伸び育
つケヤキの木。自然樹形のその木々は、地域のランドマークにも
なっています。
しかし、ここではカラスの巣やチャドクガとちょっと違う悩みが。
そう、冬になると落葉する大量の落ち葉が、近隣の家々の雨どい
や陸屋根と呼ばれる平らな屋根の上に溜まるという苦情。
そういえば、ケヤキのトンネルを作る甲州街道では、落ち葉もさ
ることながら、初夏には花の蜜が車のフロントガラスやボディに
つくため、沿道に数多くあるディーラーからの苦情もあるとか。
都市の緑を守ろうということは、誰しも賛成するのですが、身近
にあると迷惑で厄介者。総論賛成各論反対。
先日、この庭の管理についての打ち合わせ。
大きな公園でもない街中で、これほどまですくすく育った20m
以上もある箒を逆さにした自然樹形のケヤキの大木。2階程度の
高さまで切り詰め、落ち葉を落とす量を抑えようという意見と、
切り詰めたケヤキは驚いて、幹や枝から大量に葉を吹いて沢山茂
らすからかそれほど効果ないという造園屋さんの意見、街中の森
として自然樹形を残したいという意見など、なかなか結論が見出
されなかったのですが、近隣の方に迷惑になっているのは忍びな
いという所有者の意見で、道路沿いの木は敷地から枝が道路に飛
び出さないようにし、高さも2階程度に抑え続けることに。そし
て庭の中は、苦情者の感情を抑えるため、家から目にしやすい数
本のケヤキは3階程度の高さまで切り詰め、枝をすかし、それ以
外はそのままにして様子を見ることに。
毎日大量の落ち葉かきをしなくてはならない苦労も理解できます。
高齢になったら尚更。でも、雪国に住む人たちの雪下ろしの苦労に
比べれば、大したことないと思ってしまうのですが。
春の青葉を愛で、夏の緑陰を作ってくれ、街に潤いを与えてくれる
ケヤキ。日々の暮らしの中でみどりを享受していることを理解し、
落ち葉は次の春を楽しみに待ちわびるために仕方がない冬の風物詩
と思える、心の余裕が欲しいものです。クルクルと回りながら落ち
てくるタネの付いたケヤキの葉の風情を楽しむ。
都市の緑を守りたいと思う人たちを募って「落ち葉かき隊」を
結成しようかと考えております。