natural-ring コイデなきもち。。。

自然とのつながりを感じていたい。日常で出会った環な気持ちを綴ります。

東京めだか

 

里山、小川、生き物と連想すると、必ず思い浮かべるおなじみのメダカ。世界一地方名が多い魚とも言われ、新潟などでは食用にもされているそうです。また、ボウフラが大好きなため、庭先の水鉢で飼う方もいたりと、日本人に最も親まれてきた魚です。

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ところが現在では、環境省のレッドデータリストの絶滅危惧種に指定されるほど減少しています。原因は、環境汚染や開発もさることながら、外国産でメダカに良く似たカダヤシや、ペットショップで売られている黄色い体のヒメダカが放され、在来の黒いメダカを駆逐したことと、水田の用排水路が改良され、小川から水田に進入できなくなったことがあげられています。

f:id:hitoshi-k:20070526043242j:plainカダヤシ

 また遺伝子レベルでの減少も見られます。メダカは大きくわけて北日本型と南日本型があり、南日本型はさらに東日本グループ、瀬戸内グループ、山陰グループ、九州グループなど、9種のグループに分けられています。東京のメダカは東日本グループに属していますが、メダカは日本各地で採取され、あちこちで盛んに放流されてきたため、自然が豊かなところでさえ、色々混ざり合っていて、生粋の遺伝子を保つ東京産メダカはほとんど絶滅しています。

 

とても貴重な東京めだかですが、世田谷の某庭園の池では昔からその存在が一部の人たちの間で知られていました。新潟大学ではこの場所から採集して飼育し、私たちも20年以上メダカの生息する環境を見守ってきました。そんな状況のなか、東京都の野生生物保全センターが平成18年度から、東京めだかの保全に乗り出し、この地のメダカの遺伝子を調べたところ、東京在来のメダカであることが判明し、一部を採集して葛西臨海水族館、井の頭自然文化園、多摩動物園で飼育繁殖を行い、順調に増やしていました。

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ところが昨年、飼育していた世田谷産のメダカの一尾から、体に黄色い班が現れているのが見つかりました。そこで再度、最新技術によるDNA検査を行ったところ、28尾検査して4尾からヒメダカの遺伝子が検出。このため、残念ながらこの池に生息する野生個体群は、東京めだかの規程から外れてしまいました。

 

いつの間に、誰かがヒメダカを放してしまったのでしょうか。それとも、スイレンの花を復元するため移植した水草の根にヒメダカの卵が付着していたのか、はたまたサギやカルガモの足に着いていたのか、何が原因でヒメダカが混入してしまったのかは特定することはできません。新潟大学によれば、平成5年以降にヒメダカが移入したのではないかということでしたが、野外で純系の遺伝子を保つことの難しさを改めて思います。

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残るは、新潟大学で飼育していた世田谷産メダカを平成7年に譲り受け、今は個人宅で飼育している個体群が、東京めだかであることを願うばかり。この夏に行うDNA鑑定の結果が待ち遠しい心境です。

 

野外の池で確認されている東京めだかの生息地は都内で2か所のみ。生粋の東京めだかたちが、いつまでもめだかの学校でお遊戯し続けてほしいものです。