十五夜
萩の花が秋の訪れを伝えています。
山で過ごした赤トンボも里に下りてきてました。飛びつかれたのか、じっと休んで近づいてもまったく動きません。
世田谷区岡本にある、区立岡本民家園。江戸時代の農家の古民家が移築され、公開されています。ここは、家は使って維持されるという考えのもと、囲炉裏には毎日薪がくべられ、煙で屋根裏をいぶし、誰でも自由に家の中に入ることができます。
柱、土壁、茅葺屋根。昔は里山にはどこにでもあった物を上手に使って家を建て、虫を発生させないよう、囲炉裏で煙をいぶす。日本人の知恵が古民家にはつまっています。ここに来ると、なんだかほっとするのは、日本人として生まれたDNAなのでしょうか。住んでみたいなとちょっと思うのですが、古民家は、夏を涼しく過ごすように作られているため、冬はとても寒く、実際に住むことはしんどいかもしれません。
この民家園では、1年を通じ、日本の伝統的な行事を再現していています。先日訪れたときは、十五夜のお供えがありました。
ススキにオミナエシの野草が飾られ、十五個のお団子に、芋や秋の味覚を供えてあります。ススキは農耕儀礼で豊作を祈願するため、古代から使われてきました。長野県のあるところでは、今でも田の神に豊作を祈願するため水田にススキを立てる風習が残っているそうです。また、台湾では悪い夢を見るとススキでお祓いをするという話を聞いたことがあります。
ところで、十五夜といえば白い団子。でも、元々は月見にはサトイモが使われていたそうです。関西では団子の一部を尖らせるところもあるようで、これはかつてサトイモを使っていた名残ではと言われています。
岡本民家園の供え物で?と思ったのは豆腐。世田谷では昔から豆腐を供えていたと言われていますが、何故かということはわかっていません。きっと芋や栗、柿などの作物より小さい大豆は、豆腐にしてお月さまに供えたのでしょう。
十五夜のお供えは、日がたつと徐々に団子の数や果物などが減っていったとか。子どもたちが親の目を盗んで食べたそうですが、お月さまがお食べになられたと言って、おとがめがなかったとも言われています。なんともほのぼのとする話です。
衣食住、自然の恵みを上手に、枯渇させずに使ってきたかつての日本人の暮らし。ハロウィン、クリスマス、バレンタインデーなどの行事より、里山の文化や風習、その意味について次の世代に引き継いでいくことはとても大切なことと思っています。
それにしても、今夜は台風。お月さまはお団子を食べることができたのでしょうか。