実篤記念館
梅雨が明けた関東地方の七夕。
思いっきり、夏!という晴天となりました。
東の空に浮かぶ、ベガとアルタイル。今日は織姫と彦星が無事にあうことができるでしょう。
そういえば、かつて七夕に何で笹を使うのかという質問を受けたことがありました。
日本や台湾、中国、ベトナムなど稲作文化のあるところでは、竹や笹は中が空洞ということで、神様が宿る木と言われ、お祓いなどの道具として使われてきました。
台湾では、今も豊作を祈願するのに、田んぼの端に笹を立てる風習が残っていたり、日本でも地鎮祭の時に、笹を四方に立てたり、とても人の暮らしの関わりに深い植物です。
七夕の笹も、神様や祖先が宿る木に願いをかけるということにあやかったことでしょう。それにしても、七夕は中国から伝来した、手芸や文字、芸能の上達を願い行事だったものと、豊作を願う「種播(たなばた)祭り」がミックスされたものだそうですが、今日のように、願い事なら何でも良いっていうようになったのは、一体いつ頃なんでしょうか。飾られてた短冊には「いぬになりたい」という???な願い事に思わず笑ってしまいました。
新しき村で知られる、白樺派作家の武者小路実篤が晩年住んだ屋敷を公開している、調布市の実篤記念館。久しぶりに行ってきました。
ここは、大昔の多摩川が削ってできた河岸段丘の「国分寺崖線(こくぶんじがいせん)」と呼ばれる、立川から小金井、調布、世田谷、大田区まで続く、崖の斜面林で、林の中に湧水池があり、武者小路実篤が住んだ家も公開されています。
梅雨の名残のアジサイが咲いている隣では、ザクロやムクゲなど、夏の花が咲き始めています。よく見ると、その近くでは、もう秋の花であるハギが咲いていました。
もう少し、梅雨を楽しみたかったなと思いつつ、園路を進むと、その先の湧水地では
とても貴重なヒカリゴケが黄金の色を輝かせていました。ヒカリゴケが発光するのではなく、レンズ状の細胞が光を反射させて光を放つのですが、大気汚染や水質汚染、乾燥など、非常に環境の悪化に敏感なため、都会でヒカリゴケが見られること自体がとても珍しく、この公園の見どころとなっています。初夏から秋が最盛期なので、まさに見るのは「今でしょ」といった感じです。
この公園は、シダ類も多く、ヤブソテツ、ベニシダ、イノモトソウ、カニクサ、オモトなどのほか、葉の表と裏が同じような、リョウメンシダも見られます。
元々は薪や腐葉土を採っていた雑木林で、定期的な管理が行われていた林だったのですが、実篤が住み始めてからは、自然のままにしていたということで、徐々に冬でも葉が落ちない、マテバシイやシラカシ、ツバキなど、常緑の木が増えています。低木類では、神棚に飾るサカキが多く見られます。
実は、この木は、正式名称は「ヒサカキ」。サカキは西日本に多く、関東にはあまり生息しないことから、ヒサカキをサカキの代用として使っています。
ここでは、ヒサカキの隣に、サカキが仲良く生えていました。サカキは葉のふちが丸く、ギザギザ(鋸歯)がなく、爪のようなものがあるのが特徴です。
関東地方で代用している木はサカキにあらずということで、「否サカキ」という名前を付けたと言われています。
林の外はうだるような炎天下でしたが、時折涼風が頬を伝う林に囲まれ、湧水の池の周りに佇んでいると、自分もなにか書けるような錯覚を覚えた自然観察でした。