雑木林の再生に向けて
里山。かつては日々の暮らしを支える燃料や畑の堆肥を得る生産場所として、人が常に関わり続け、保たれてきた自然環境。
やがて、薪や炭はガスや石油、電気に変わり、堆肥も化学肥料が主流になるにつれ、経済価値が失われ、管理されなくなってしまいました。人が管理することで保たれたきた自然環境も、手放してしまった結果、今では人の親指ほどの太さになった笹が藪をつくり、不法投棄の場所になっています。
雑木林の春は、冬に燃料やシイタケのホダギを生産するために伐採したコナラやクヌギの切り株から新芽が沢山生えてきます。夏は新芽や若木を背丈の高い草や、巻きついて被ってしまうツタに負けないよう、下草刈り作業。晩秋から冬にかけは、せっせと落葉をかき集め、腐葉土を作り、冬には伐採というサイクルで管理します。
下草刈りされた地面には、冬場は太陽の光が差し込み、地面の温度を温めます。定期的に下草刈りをすると、競争力の弱い草も育ち、様々な野草が顔を出します。色々な花が咲くことで蜜を吸いになってくる昆虫が訪れ、昆虫を捕食する小鳥や小動物、そして小鳥や小動物を食べる蛇や大型の野鳥などがやってきて、生き物のにぎわいも育まれます。
荒れた雑木林を再生し、かつてのような生き物がにぎわう自然を取り戻し、次の世代
引き継いでいきたいと、埼玉県吉見町の荒れた雑木林の再生活動を進めています。
9月とはいえ、まだまだ猛暑日が続く日曜日、照りつける日差しを恨めしくおもいつつ、意を決し、笹刈り作業を開始しました。太く、背丈以上となった笹を刈払機でちょっと払うと、道沿いには案の定、色々なものが捨てられています。
とりあえず一か所に集め、3mの幅で刈り進みました。時々、刈り払われた笹を片づけるのですが、藪の中は風がなく、蒸し暑いため、笹を集めるたびにしゃがんだり立ったりすると汗だくになります。それでも、スポーツドリンクで水分補給をしつつ、90分ほど作業をすると、藪の中にぱっかりと道が開けました。
雑木林の再生。元のような自然環境を取り戻すには、とても一人では埒があきません。一緒に、シャツも絞れるほどの気持ち良い汗をかきましょう!良い汗かいて美味しいビールを飲みましょう!沢山の生き物が住める環境を再生しましょう!といっても、よほどの人でない限り、キツイ作業を何度もする人はいないでしょう。何だか面白そう!という、ワクワクするような夢のある目標を設定しないと、夏や冬の作業に参加するモチベーションを保つことは難しいものです。
埼玉県吉見町の活動地。多くの人が楽しみながら参加する目標はないかと考えていたところ、6月に開催した小菅村イベント時に目にしたツリーハウスや、自然体験活動を指導している町田の保育園で職員が手作りしたツリーハウスを思い浮かべました。
今は藪だけど、皆で汗を流して明るい林に戻し、やがてそこにツリーハウスを作る。その周りに石窯をつくり、料理を楽しんだり、木々の間にハンモックを吊るし、ゆらゆら揺られて昼寝を楽しんだり、森のカフェや森のコンサート、森の楽校などを開催する。明るい林には沢山の野草が咲き、冬に伐採されて切り株から育った若い木にカブトムシやクワガタが樹液を吸いにやって来て、親子が昆虫採集を楽しむ。。。
色んな夢が膨らみます。
9月28日(土)、ツリーハウスを創ろう!と題し、笹刈りイベントを行います。お昼は雑木林を所有する農家が作った、採れたての新米を各自でおにぎりにして食べます。薪を燃やし、釜戸で炊いた銀色に輝く新米の味はオカズもいらない最高の贅沢。
午後は、どんなツリーハウスを作ろうか、どんな活動をしていこうかなど、夢を膨らませつつ、実現に向けた取り組みの話し合い。
今は荒れ果てた雑木林ですが、 一つ一つ、皆で協力しながら作業を進め、生き物も人もにぎわうヤマに再生させていく。
そんな夢を共有するプロジェクトがいよいよ始動します。