春 里山の野草
気がつけば、もう4月も終盤。年度末から新年度にかけ、バタバタしているうちに、ブログの更新も遠ざかっていました。
この時期は、意識していないと、里山のスプリングエフェメラルを見逃してしまい、翌年まで待たねばならないため、ちょっとでも時間が空いたら、フィールドに行くように心がけています。
4月3日、2月にボランティアの方たちと下草刈りと落葉かきを行った斜面で、今年もカタクリが沢山咲きました。ただ、例年は3月28日~4月3日頃がピークを迎えているのですが、今年はもう盛りを過ぎていました。毎日開花状況を確認していただいているボランティアさんの話では、3月25日がピークだったそうです。
それでも、まだ多少、朝日を浴びて、花弁をそり返した美しい花を見ることができました。
その足で、これも2月に下草刈りを行った、イチリンソウ自生地を確認しに行くと、今年はもう咲き始めていました。20年前は数株しか咲いていなかったところを、地域の方と一緒に下草刈りを行ってきた結果、今では大きな群落地となり、地域の宝物として見守られています。こちらも例年ならゴールデンウィークあたりがピークとなるのですが、22日に再度確認に行くと、もう盛りを過ぎてしまっていました。
カタクリやイチリンソウなどは、春の一瞬だけ花を咲かせ、あとは地上体は枯れて翌年まで眠ってしまうため、春のはかなき夢とか、春の妖精という意味でスプリングエフェメラルと呼ばれていて、あやうく今年は見逃してしまうところでした。
イチリンソウの咲く場所に隣接する雑木林では、2株のイカリソウも自生しています。あまり公表していないので、知る人ぞ知る場所なのですが、今年も1株に船の錨のような花を咲かせているのが確認できました。この数年、タイミングが悪く花を確認することができなかったのですが、盗られずに咲いてくれたかと、ホッとしました。
15日、町田のフィールドでは、クマガイソウを初めて確認しました。こんなところにあったか?と思うような所に咲いていて、植えられたものなのか、自生のものなのか定かではありませんが、これからも見守っていくことにします。
22日、雑木林の林縁では、沢山の着物を重ねた十二単に花を見立てた、その名もズバリのジュウニヒトエや、日本在来のカントウタンポポが盛りを迎えています。
林の中では、キンランやエビネも咲きだしました。やはり今年は花が例年より早いようです。
都会では貴重となった野草が、世田谷にはまだチラホラ確認することができます。
人が下草刈りや落葉かきなど、生活するために自然と関わってきた時代の遺産でもある里山の植物たち。生活様式が変化し、里山との関わりが薄れてしまった今、可憐な野草が減少の一途をたどっています。86万人が暮らす世田谷も、かつては田園風景が広がる農村地帯だったため、その名残で都市で辛うじて里山の植物が自生しています。
毎年この季節に思うのですが、貴重な野草を多くの人たちと協力しあい、守っていくため、この植物を守ろう!と公表すれば、心無い人に盗られてしまう恐れが付きまといます。さりとて公表しなければ、いつまでたっても多くの人が守ろうという意識も芽生えてきません。鳥のように移動できない野草を守るジレンマです。イチリンソウの自生地のように、地域の宝物として、地域で守り育む仕組みづくりが急がれます。
さて、今年の春も、もう少し野草を捜す日々が続きそうです。筍も旬を迎えました。