natural-ring コイデなきもち。。。

自然とのつながりを感じていたい。日常で出会った環な気持ちを綴ります。

ツバメが飛ぶ人情味のある街をいつまでも

 

f:id:hitoshi-k:20120611175100j:plain

春になると、フィリピンやタイ、インドネシアなど南の国からはるばる渡ってくるツバメ。春から夏に1~2回、夫婦仲睦まじく雛を育て、秋に帰っていきます。

ツバメが巣づくりする場所は、巣材となる泥や草と、1日13時間のうち、700匹は必要と言われるユスリカやカ、ハエなどだくさんの餌が採れる環境が近くにあることと、人が近くに住んでいること。人家の周りに巣を作れば、カラスやヘビなどから雛を守られれることを知っているのでしょう。そして、人はツバメが軒先に巣を作ることは、お客が絶えない証と、商売繁盛の験を担いで大切にしてきました。このため、商店街が最も安心して子育てできるところになったと言われています。

 

世田谷で一番距離が長い祖師谷大蔵商店街。ここは道の拡張が進まず、一方通行の狭い道のため、人と自転車で溢れ、初めて訪れた人は、まるで中国みたい!という感想が聞かれます。そんな狭い商店街を、人通りの合間を縫うようにたくさんのツバメが飛行しています。それは周辺に緑地や川が流れていることと、古くから営む商店、人がたくさん往来することが要因と言われ、ツバメウォッチングの名所となっています。また、巣を作られたお店では、巣が落ちないよう(糞が落ちないよう)板などで細工しているお店も見られます。

f:id:hitoshi-k:20120611175753j:plain

しかしこのところ、ツバメの姿が少なくなってきました。原因をあれこれ考えると、チェーン店が増え、雇われ店長が糞による汚れやお客さんの服を汚すことを防ぐため、巣を壊してしまうのでは?なんて意見もありますが、一番の理由は、商店街の建て替えにあるようです。最近はやりの建物は、軒や庇がなく、すっきりとしていて、カラスに見つかりやすくなってしまいました。

f:id:hitoshi-k:20120609091453j:plain

世田谷トラストまちづくりでは、10年前に世田谷全区域のツバメが子育てをしている営巣調査を行いましたが、この度、それを基にして、同団体に所属する野鳥ボランティアたちにより、本当にツバメが少なくなったのかを検証するための調査が3年にわたり行われました。その結果、商店街での営巣は確かに少なくなり、商店街とははずれた周辺のタクシー会社の車庫や事業所の倉庫で巣を作っていたことが判明。ツバメの数自体は1000~1100羽と、前回調査とほぼ同じ数ということもわかりました。

f:id:hitoshi-k:20120611174934j:plain

はるばる渡ってきたものの、去年あった巣がなくなっていたり、カラスに見つかりやすくなった建物では巣作りができないと思ったのでしょう。安心して巣づくりできる好物件を探しているうち、夜中も人がいるタクシー会社の倉庫や、事業所の倉庫を見つけ、よし!!と思ったら、他のツバメたちも同じことを考えていたらしく、いつの間にか集中してしまい、コロニーを形成したようです。でも、嬉しいことは、たくさんの巣による糞害や、たくさんの雛の鳴き声の騒音があっても、優しい眼差しで巣立ちまで見守る人がいること。米の害虫を食べる益鳥として重宝がられて以来、日本人はツバメと長い付き合いを築いてきました。きっとそのことが日本人の心のどこかに備わっていて、ツバメを優しく見守るようになったのではないでしょうか。f:id:hitoshi-k:20120613175317j:plain

ツバメが安心して巣づくりできる街は、自然に優しい、人情味にも溢れる人が多く暮らす街なんだろうなと思っています。

 

 

種の保存?

 

f:id:hitoshi-k:20120611140849j:plain

今年のツツジは花つきがとても良いと感じています。ツツジに限らず、全体的に良い気もします。先日、造園屋さんと話をしたところ、同感とのこと。

f:id:hitoshi-k:20120607132615j:plain

そういえば、今年はウメがなかなか咲かず、3月に入ってやっと盛りとなり、各地の梅園では期間を延長して梅まつりを行っていました。ウメの花が遅いのだから、きっとサクラの開花も遅れるだろうと予測していたのですが、さにあらずサクラは例年通りに咲き始め、ウメとサクラの花を同時に見れる何とも不思議な春を体験しました。

f:id:hitoshi-k:20101106132917j:plain

成城にある「神明の森みつ池」と呼ばれる国分寺崖線の樹林地。ここには23区内では唯一、ゲンジボタルが自生しています。港区にある自然教育園や皇居でもゲンジボタルは発生しているのですが、こちらは人が放したのが野生化したと言われています。

ゲンジボタルは、清流が好きなカワニナという貝しか食べないため、自然度が豊かさを知る指標生物です。東京近郊の里山では、5月末からポチポチ出始め、梅雨の最中の6月15~20日あたり、雨上がりのムッとした湿度の高いときに発生のピークを迎えます。毎年ホタルの季節には、この樹林地の保全活動を行っている「成城みつ池を育てる会」のメンバーにより、毎晩交代でホタルの出始めから、見られなくなる6月末までの期間、ヤブ蚊に刺されながら調査が行われます。

f:id:hitoshi-k:20120101004226j:plain

今年も5月の終わりころ、そろそろホタル調査を始めようかと思っていた矢先、6月に入ったとたん一斉に出始め、慌てて調査を開始しましたが、なんと6月3・4日にピークを迎えてしまいました。しかも例年は50~60匹前後がピーク時の発生数なのですが、今年は80匹。この10年間の調査では最高記録です。まだ夕方には涼しい風が吹く梅雨入り前。自分がこの森と関わって23年たちますが、もちろん初めての出来事です。横須賀など、他のホタルの自生地でも同様の状況だそうです。

f:id:hitoshi-k:20120101011833j:plain

樹木のアカマツは、木が弱ると子孫を残すため、たくさんの松ぼっくりを作ると言われています。今年の春のウメとサクラ。ツツジの花つきの良さ。そしてゲンジボタルの大量発生。近年の異常気象や大震災などが影響し、生き物たちが種の保存を図ろうとしているのでしょうか。来年は一体どうなっているか、とても気になります。f:id:hitoshi-k:20120611141450j:plain

生物の多様性

 この季節、田植えを終えた田んぼには、稲の苗の間をカエルが跳びはね、ドジョウが泳ぎ、サギがついばみにやってきます。畦は日に日に強くなる太陽の日差しを浴び、草が勢いよく伸び始めます。そして農家はひたすら水の管理と畦の草刈りと、田んぼの中に生えてくる粟や稗の刈り取りに追われる日が続きます。

 

埼玉県吉見町で、一人で専業農家を営んでいる高校時代の友人のところを訪れ、農作業の手伝いをしております。今日の作業は田んぼの草刈り。いつの間にかあっという間に伸びた雑草の刈り取りです。

f:id:hitoshi-k:20120603112717j:plain

草刈り機を肩にかけ、田んぼの斜面に沿うように刃をあて、畦の端から刈り取っていきます。草刈りは、お米の収量や出来に左右される大事な作業。このまま放っておくと、カメムシやガなどの虫が草むらの中で大繁殖し、稲の葉を食い荒らして米の生育を阻害したり、稲穂をかじって商品にならなかったりと、農家にとっては大打撃を受けてしまいます。このため、農家は畦の草をひたすら刈り取り続けます。

f:id:hitoshi-k:20120603120810j:plain

実はこの作業、植物たちにとっても、昆虫たちにとっても、ありがたい作業なのです。何もしないで放っておくと、たくさん生えている草のうち、強い草が競争に勝って優占種となり、やがて単一な植生となっていきますが、草刈りのおかげで、競争の途中でまたリセットされるため、弱い草も生き残ることができます。このため、色々な種類の草が生息することが可能となります。また、色々な草の根が絡み合うことで畦がしっかり固定され、人が歩いても崩れることのない強度を保つ作用があると言われています。

 

里山に代表される、人の関わりによって生物の生態系が守られることを研究している、保全生態学者の鷲谷いづみ氏によれば、これらの効用に加え、単一の植生では、何かその植物に打撃が与えられると、一気にやられて絶滅してしまいますが、沢山の草が生えていれば、例え一つの種類の草が打撃を受けても、大きな影響を受けることが少ないと説いています。つまり、沢山の植物が元気に生息していれば、田んぼの畦が崩れることは心配無いとういことでしょう。さらに、沢山の種類の草が生えているということは、例えばアゲハチョウの幼虫はミカン科の葉しか食べないように、色々な種類の昆虫が、自分の好きな草にやって来ます。美味しいお米を作るため、人が草刈りなどの管理作業をこまめに行うことが、いろんな草花を生やし、いろんな昆虫を呼びよせ、そして昆虫を食べるカエルや野鳥がやってくるといった環境が作り出されるのです。

f:id:hitoshi-k:20120603122354j:plain

久しぶりに持った草刈り機。体勢を崩しながらも斜面の草刈りを終え、額にかいた汗をタオルでふきつつ辺りを見渡すと、さっぱりした畦が顔を出していました。植物たちはまた「よーいドン!」と競争をスタートさせます。きっとすぐに色々な昆虫もやってくることでしょう。生き物たちのにぎわいが蘇ります。

f:id:hitoshi-k:20120603130933j:plain

除草剤を使わず、殺虫剤もほとんど捲かず、多くの生き物が生息する田んぼで作られた特別栽培米のコシヒカリ。作り手の思いがいっぱい詰まったお米の味は格別です。

 

 

幼児の自然体験活動

 

f:id:hitoshi-k:20120530090801j:plain

渡りの途中、梢で休むカッコウがさえずる町田市成瀬にある成瀬山。

昨日は、2008年度から自然体験活動指導をしている保育園の今年度第1回目の活動でした。年長と年中の子どもたちを自然に連れ出し、自然と触れる楽しさ、不思議、発見を通し、生きているものを大切にする心、協力しあう心、助け合う心、共に行動する心などを育てることと、あわせて先生方の自然体験指導のスキルを高めるため、隔月の2時間、2年間、成瀬山をフィールドに行っています。同じ法人が営む別の園でも自然体験活動を指導しているのですが、そちらは年長クラスのみを相手にしているので、同じ内容のプログラムでも勝手が全く違います。また、両園の子どもたちの成長ぶりも比較できるので、得るものが多くあります。

 

園から歩いて10分のところにある成瀬山。先に行ってしばらく待つと、2人で手を結んで長い列の子どもたちがやってきました。新年長さんは、自分のことを知っているので、久しぶりでも親しげに近寄ってくるのですが、新年中さんはちょっと緊張した様子。落ち着きもありません。そこで、挨拶をした後は、緊張をほぐし、落ち着きと集中力を高めるために、写真に映る道の先に1本立っている木のところまで行って戻ってくる競争を。まずは体力の発散です。ここで、子どもたちの体の発達具合も確認です。今年の年中さんは、どんな感じかな。

f:id:hitoshi-k:20120530100802j:plain

 落ち着いたところで、森の声が聞こえるようになると、自然あそびは、ものすごく楽しくなるんだけど。。。みんな聞こえるようになりたい?とそそのかし。子どものワクワク感が高まっています。そこで、目を閉じてどんな音が聞こえるか数えてみることに。目をぎゅっとつぶり、小さな手で1つ2つと指を立てる姿はとても可愛らしい風景です。何が聞こえた?という問いにカッコウ、ウグイス、シジュウカラヒヨドリ、カラス・・・声を真似して教えてくれます。なかには、隣の友達の息なんていう答えも。いろんな音が聞こえたようです。

 

さて、いよいよ今日のあそびの説明。紙を木に張り付け、クレヨンで擦り出して模様を写す「木のたくぼく」。3人1組になり、気に入った木を見つけたら、まずは幹をいっぱい触り、デコボコやザラザラ、スベスベを手のひらでいっぱい感じ、紙に擦り出されるイメージを膨らませます。次に紙の両端を2人の友達が押さえ、1人がクレヨンを横に持って上から下に擦りつけます。先生2人に協力してもらい、やり方をデモし、奇麗に写した紙を子どもたちに見せると、もう目がランラン。早くやりたいモードが充満しています。

 

さーはじめよう!という合図で一斉に森に分け入った子どもたち。我先にお気に入りの木を見つけようと山に駆け上っていったかと思うと、駆け下りてきたり。年中さんは初めての自然体験。山のデコボコ道に慣れてないため、バランスを崩して転んでしまうのも、年度はじめの光景です。横を見ると、斜面を怖々上ってい年中さんに手を差し出す年長さん。しっかりお兄さんをしています。微笑ましく見ていると、後ろのほうでは虫が怖いと鳴き騒ぐ女の子。森の中は大賑わいです。何とか1人2枚のたくぼくを作り、無事に終了。今日の復讐を兼ねて葉や枝のたくぼくを取ることを宿題としました。秋の展示会には、余白を手でちぎり、模造紙に糊づけしたとてもカラフルな大きな木の絵が作られます。

f:id:hitoshi-k:20120530103711j:plain

今年度1回目の活動は、聴覚、触覚をメインとした自然体験。転んだ子も虫が怖いと泣いた子も、またこの山に来たいと言ってます。自然体験を通し、ボディバランスが良くなって転ばないようになったり、怖がっていた虫を掴めるようになっている姿を、新年長さんの去年の今頃を思い浮かべながら想像しました。

これからの1年の成長が楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

虫目で歩けば

 

f:id:hitoshi-k:20120529143845j:plain

最近、虫好き女子の活躍が目覚ましい。漫画家、イラストレーター、陶芸家、虫モチーフのグッズセレクトショップ経営者等々、こんなに虫好きな女子がいたのかと驚いていたところ、今日の午後はそのうちの一人、「虫目で歩けば」という昆虫観察の趣味から生まれた本を上梓されたフォトエッセイストの鈴木海花さんと、成城の緑地を2時間ほど歩きました。

 

緑地に入り、ついこの間まで白い花を咲かせていたカジイチゴの黄色い実をランチ後のデザートにいざ出発。

f:id:hitoshi-k:20120529141724j:plain

歩いてすぐに目に飛び込んできたのが、アオキの葉を食べて休んでいるスズメガの一種と思われる幼虫がお出迎え。木の幹にいたら気付かなかったけど、アオキの枝の緑色とのコントラストで目立ちます。

f:id:hitoshi-k:20120529142448j:plain

続いて、葉の上で休んでいたコメツキムシ。体を裏側にすると、しばらくモゾモゾ動いたかと思うと、パチっと音を立てて跳びはね、元の状態に。コメツキムシには申し訳ないけど、しばしひっくり返る様子を楽しみました。

f:id:hitoshi-k:20120529144145j:plain

湧き水の周りではシオカラトンボを眺めつつ、ふとヤブマオの葉に目を落とすと、葉と葉の間に隠れるようにカゲロウの幼虫が、誰にも見つかりませんようにと祈っているように、ひっそりと息をひそめていました。

f:id:hitoshi-k:20120529144321j:plain

明るい場所に出ると、今度はジュッホシテントウが。海花さん、このテントウムシは顔が可愛いと。改めて見ると確かに。可愛いと思って見たことがなかったので、以外な発見。

f:id:hitoshi-k:20120529145321j:plain

階段の手すりには、テントウムシの一種とおぼしき幼虫が歩いていたり、カナヘビが体を温めていたり。思わず撮影に夢中になって、先を行った一行を追いかけると、木の下にしゃがみ込んで何やら見入っている様子。聞けば、木の根元に生えたキノコに巣くうキノコムシ。小さなムシがキノコの中に入ったり出てきたりと、忙しそうに動いています。

f:id:hitoshi-k:20120529150208j:plain

f:id:hitoshi-k:20120529150259j:plain

そろそろ違うフィールドに行く段になり、園路を歩いていたら、早く土のある場所に行きたいのか、かなりのスピードで太陽で熱くなった園路を移動中のコガネムシの仲間の幼虫。熱い熱いという声が聞こえたような気がします。

f:id:hitoshi-k:20120529150553j:plain 

次のフィールドに着いてすぐ、スタッフの一人がアカスジキンカメムシを発見。みんな虫を見つける感度が格段に上がっています。カメムシは臭いと嫌われるムシですが、たくさんの種類があり、様々な模様が楽しめます。アカスジキンカメムシは、その名の通り、赤い筋と金属的に輝く羽の色との模様に造形の美を感じます。

f:id:hitoshi-k:20120529155455j:plain

川沿いには、蜘蛛の子どもたち。生まれたばかりの子どもたちは団居(まどい)と呼ばれる集団生活をしていて、ちょっと脅かすと、一斉に散らばっていきますとのことで、ふっと息をかけると正に「蜘蛛の子を散らすと」とはこのことか!!と実感。この様子は必見の価値あり。また、海花さんの話によると、ときどきパイオニア精神あふれる小グモが細い細い糸を何度も流し、どこかにくっついて糸がわたると、そこをお行儀よく1匹ずつ縦になって移動するとか。虫目があってこその発見に思わず驚嘆。

 

わずか2時間。虫目になって自然を見ると、カブトムシやチョウなどの花形昆虫とは違った、たくさんの小さな虫たちがの息遣いを楽しめます。自然を見るアンテナの感度を高めた午後となりました。

f:id:hitoshi-k:20120529160512j:plain

海花さん曰く、「虫目」とは、自然のディテイルの美しさ、おもしろさが発見できる目のこと。お勧めの本です。

また、6月16日(土)11:00~18:00

アーツ千代田3331 B104室にて、

「虫愛ずる一日」というイベントも開催される

とのこと。鈴木海花さんもパネラーとなった

トークショーや、立体虫切り紙ワークショップ

など、さまざまに虫を楽しんでいる人たちと

虫三昧の一日を過ごそうという企画。

興味のある方は、海花さんの下記のブログを

ご覧ください。

http://blog.goo.ne.jp/mushidoko64/e/27d8e5f65dffbd8da273b5c584eb7e72

水車小屋

 

f:id:hitoshi-k:20120527143117j:plain

初夏の爽やかな風に吹かれ、三鷹の国分寺崖線まで湧水を使った田んぼの状況を確認にし行ってきました。

 

田んぼには水がはられておりましたが、まだ田植えされてなく、しばらく景色を楽しんでいたら、ふと対岸に据えられた水車が目に入ってきました。たしかに、かつてはこの辺り、野川の水を使った水車小屋が6軒あったそうで、当時を偲び、野川のほとりに復元されているものでした。復元された水車の隣には、昭和43年まで本当に野川の水で水車を回し、米や麦、粉物まで引いていた水車経営をしていた農家が保存され、公開されています。

f:id:hitoshi-k:20120527143211j:plain

7年ぶりに訪れてみましたが、当時は古びれた佇まいで、かつて使っていた水車が分解され、なんとなく展示されていたのを覚えていたのですが、今では三鷹市に寄贈され市の文化財となり、家屋や民具とともに、水車小屋には平成16年に復元された直径5m弱の大きな水車が復元され、一般に公開されていました。

 

水車は、小川の水を使い、脱穀と精米、小麦とかの製粉をすることは知っていたのですが、今では水車でそのようなことを行うことは消滅してしまいました。しかし、三鷹市が募集したボランティアの方の案内をお聞きし、その知恵と工夫に改めて関心。例えば使われていた材。水車自体は、当然ですが水に強いアカマツが使われますが、摩耗の激しい歯車の部分とかにはシラカシ、そうでない部分はケヤキを。すべて地域で育つ木を、それぞれの特性に合わせ適材適所に使われています。

f:id:hitoshi-k:20120527145847j:plain

復元された大きな水車は、野川の水を使い想像もできないほどの速度で回転しています。大きな水車の周りには大小様々な歯車が所せましと配置され、米を搗いたり、石臼を回したり、その粉のふるったり。ベルトコンベアのように下から上に米や粉を運ぶ装置には、よく考えたものだと関心。歯車と軸の組み合わせで、こんなに色々な作業ができるとは。

 

三鷹市に生まれた新たな文化財。その宝を愛するボランティアの方の説明を拝聴しつつ、日本人の自然との関わりの深さと、身の回りの自然を上手に利用してきた知恵と技術。次世代に伝承することの大切さを改めて感じた初夏の一日でした。

 

 

 

 

 

人海戦術

 

f:id:hitoshi-k:20120517110054j:plain

都市に残された里山。

 

小田急線成城学園前駅から世田谷通り方面に歩いて10分。

区立成城三丁目緑地という国分寺崖線の森があります。

明治時代は皇室の御料林で、その後政府が譲り受け、農林水産省の管轄となり

平成10年頃までは樹林地の中に林野庁職員宿舎がありました。

約2haある緑地は、林野庁の赤字解消策の一環として緑地部分を世田谷区に売却され、建物を取り壊し緑地として整備され公開されています。

林野庁が管理していたためか、クヌギ・コナラといった武蔵野の雑木林のほか、アカマツやスギ、サワラなどの針葉樹も見られ、湧き水の水路には、サワガニやオニヤンマが生息しています。

 

現在ここでは、ボランティア、隣接する小学校、世田谷トラストまちづくり、そして世田谷区の協働により、緑地の保全活動が進められています。小学校では総合学習の時間などを利用し、ボランティアの指導のもと全学年が里山体験活動を行っています。(このお話はいずれご紹介します)

しかし、ボランティア活動は平日のため、メンバーが十分とはいえず、広大な緑地の下草刈りなどの保全作業が思うように進みません。

そんな悩みを抱えていた3年前、世田谷トラストまちづくりが、世界的にも有名な金融会社のCSR活動とパートナーシップを結び、毎年初夏から夏の時期に3回ほど企業ボランティアのメンバーがやってきて保全作業を手伝ってくれています。

 

作業は主に、たくさんの野草が咲く環境づくりのため、林床に太陽の光が当たるようにするための茂った笹の刈り取り。

1回の活動で20名ほどが参加してくれ、斜面に横一列に並び、ノコギリ鎌を手に

一斉に上に向かって刈り取っていきます。わずか1時間の作業ではありますが、あっという間に奇麗に。ボランティアだけでは到底ここまで作業を進めることはできません。みんな爽やかな汗をかき、清々しい笑顔。

f:id:hitoshi-k:20120517121239j:plain

サンドウィッチランチの後は竹を切りだし、お土産用のコップづくり。今夜のビールを楽しみに、ジョッキほどのコップをつくったり、蕎麦猪口をつくったり。

f:id:hitoshi-k:20120517135119j:plain

普段は高層ビルの中で1日机に座り続け、社内でも話す相手も限られているため、作業を皆で行うことによる一体感と、笹刈りの成果が目に見えてわかることの達成感を味わえると好評で、毎年手伝いに来てくれる方や、世界各地からこの作業にかけつける人も。まさに多国籍軍による人海戦術の里山保全活動が展開されます。ボランティアたちは管理作業が進むこと、企業側は社員の結束感の醸成や企業市民の責務を果たすことなど、お互いウィンウィン。

自分もこの日ばかりは必死に単語を必死に思いだし、英会話とは呼べないレベルで説明。でも、不思議と通じています。普段使わない頭の刺激で心地よい疲労感を覚えつつ、この時期になると英会話を勉強しようと思うのですが、喉元過ぎてしまと。。。

 

森林荒廃が進む全国の山々。人手不足に悩む各地の緑地保全活動の新たな担い手として、1年に1週間だけでも企業が社員ボランティアを派遣する制度があれば、日本の森林もかなり元気を回復すると期待されます。